第74回 さんすい会    講師:山田 弥一氏

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第74回さんすい会演題 「元少年Aの手記出版について」 要旨


平成27年10月21日

 元少年Aが自伝の本「絶歌」を6月に出版した。元少年Aとは、平成9年2月から5月にかけて兵庫県神戸市須磨区内で発生した神戸連続児童殺傷事件の犯人で、当時14歳の中学生であった。

事件は小学生が次々に襲われ、2名が死亡し、3名が重軽傷を負った。11歳男児の首が中学校正門の塀に晒された。彼は本のなかで「僕はこの光景を『美しい』と思った」「自分はこの映像を視るために生まれてきたのだ。すべてが、報われた気がした」などと書いている。彼は犯行時14歳であったため、少年法に守られ氏名、住所などは明らかにされなかった。現在、彼は32歳である。「著者元少年A」でなく、実名を明らかにすべきである。我が国は、「表現の自由」が保障されているが、被害者家族の承諾もなく犯人が一方的に出版することが許されるのか。

印税は定価の10%が通常だという。15万部が印刷され、2,250万円が彼の手元にはいることになる。人を殺害して、手記を発表して印税で金儲けをする。これは犯罪ビジネスである。これが許されるのか。昭和57年米国・ニューヨーク州で「サムの息子法」が制定された。この法は犯罪者が自らの犯罪物語を出版・販売して利益を得ることを阻止する目的で制定された。同様の法律は他の多くの州で制定されている。犯罪者による犯罪のビジネス化を防ぐ目的と同時に被害者・遺族救済のための法である。我が国においても議論が活発になり法が制定されることを望むものである。

                                                                                                                                    

校友会副会長・法学部同窓会会長       

   講師: 山田 弥一(法・法S43 卒)





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更新日:2015年11月02日